こんにちは、ワクワク経営ナビゲーターの古屋早雪です。
前回のコラムでは、M&Aの後にPMIを実施することが大切とお伝えしました。
では、中小企業のPMIって、具体的に何をしたら良いのでしょうか?
まずは、将来ビジョンを明確にすることです。
そもそも何のためにM&Aするのか、M&Aの後にどんな会社にしたいのか。
そんなことは、M&Aする前に、M&Aを検討する前に決めておくことだ!
そう思いましたか?
その通りです!
しかし、M&Aが目的になってしまうと、この観点が抜け落ちて、いかにM&Aを成約させるかが目的になってしまうことがあります。
何のためにM&Aするのか、M&Aした後はどのような会社にしたいのか、このことは常に頭の中に置いてM&Aを進めることが必要です。
この部分がおろそかになっていると、せっかくM&Aしたものの、思ったように業績が伸びない、引き継いだ会社の運営がうまくいかない、ということが起こってしまいます。
つまり、PMIは「M&Aの後の取り組み」ではあるものの、M&Aの前からPMIは始まっている、とも言えるんですね。
2つ目は、関係者との経営方針の共有です。
ここでいう関係者とは、前経営者、つまり企業の譲渡側経営者や、引き継ぐ会社の従業員、そして取引先を含みます。
会社を引き継ぐということは、経営者が変わるということですから、関係者にとっては「会社はこの先本当に大丈夫なのか?」という不安が生まれることになります。
会社を引き継いだ後、こういう方針で経営していきます、こんな会社にしていくつもりです、ということを各関係者としっかり共有することが大切です。
これは、従業員はもちろんのこと、前経営者や取引先も同様です。
前経営者は、会社を売ったのだから、もう経営には関係ない、と思われるかもしれませんが、取引先や従業員との関係上、また技術や業務面でのノウハウの引継ぎのため、しばらくは会長などの役職で会社に残ってもらう、というケースもあります。
このとき、前経営者と経営方針の共有ができていないと、経営の引継ぎに十分に協力してもらえないという可能性が生じます。
また、取引先も、経営者が変わった会社と、これまでと同様に取引しても大丈夫なのか、今後はどのように取引を続けられるのか、といった不安が発生しますので、経営引継ぎ後の会社の方針についてしっかりと説明しておく必要があるでしょう。
3つ目は、従業員が安心して働ける環境づくりです。
経営方針の共有の項目でもお伝えしましたが、特に従業員は自分が働く会社が、経営者が変わって今後どうなっていくのか、自分の待遇はどうなってしまうのか、と不安になります。
ただでさえ、勤めている会社がM&Aされるとなれば、解雇されてしまうのではないか、経営者が変わって仕事の内容も全く変わってしまうのではないか、と思ってしまったとしても不思議はありません。
特に、人手不足の昨今、人員や従業員が持つ技術・ノウハウを獲得するためにM&Aをおこなう、というケースは多いですが、M&Aしたのに従業員がみんな退職してしまった、となれば元も子もありません。
退職しないにしても、将来への不安や環境の変化への戸惑いで、業務効率が落ちてしまうということも考えられます。
まずは経営引継ぎ後の会社の方針について十分説明するとともに、個人面談をおこなうなど密なコミュニケーションを図り、不安を払しょくして将来にワクワクしながら働ける環境を整えてあげることが大切です。
M&Aで会社を引き継ぐときは、上記のようなことを意識してPMIをおこない、ワクワクする会社を作りましょう!